低カロリー甘味料は敵か味方か?

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人工甘味料の話題があがると強い抵抗を感じる人がいます。

最近ではWHOがアスパルテームという人工甘味料と発がん性の関する発信がありました。サッカリンという人工甘味料は安全性の検証が進むまで禁止されていた経緯があります。

歴史をさかのぼれば、古代ローマ人はワインに甘みを与えるため鉛製の鍋や鉛合金を使ったと言われます。ワインの酸と鉛が触れることで鉛が酢酸鉛という物質が生じ、これは強い甘みを持つのでワインの甘味料として使われたのだそうです。

酢酸鉛は世界で最初の人工甘味料ではないかと言われますが、非常に強い毒性があり現在使われることはありません。こういった歴史的経緯を踏まえると、人工甘味料に抵抗を感じる人がいるのも自然なことかもしれません。

現代は食べるものに困ることのない飽食の世界になり、それに合わせてカロリーを抑えながら甘い味を作れる甘味料への需要も高まってきました。

ひと口に甘味料と言ってもたくさんの種類があります。カロリーの非常に少ないものもあれば、多少のカロリーを含むもの、人工でないものもあります。

  • アセスルファムK
  • アルロース
  • アスパルテーム
  • エリスリトール
  • ラカンカ
  • サッカリン
  • ステビア
  • スクラロース
  • キシリトール

この記事では、砂糖の代わりにこういった甘味料を使うと体重を減らす効果を期待できるのか、注意すべきことがあるのかを考えます。

甘味料で体重が落ちる仕組み

ほとんどの人は、減量をするとき体脂肪を落とすことを目的とします。体脂肪はカロリー収支がマイナスになったときに落ちるので、カロリー摂取量を減らすのために、砂糖の代わりに低カロリーの甘味料を使うということになります。

例えば、砂糖入りの紅茶で1杯100kcal摂っているとして、それを5kcalの甘味料に置き換えるとカロリー摂取量を下げるのに役立つでしょう。1回で生まれる差は小さなものでも、これを毎日の習慣として続けると大きく積み上がる可能性はあります。

甘味料は代謝に影響を及ぼすわけではなく、砂糖よりもカロリー摂取量を抑えることに尽きます。カロリーを摂らなければ体脂肪が減るということだけ見ればシンプルな理屈ですが、甘味料の有効性にはさまざまな議論があります。

相関関係と因果関係

砂糖を他の甘味料に置き換えると体重は落ちるのかという疑問に対して、体重が落ちると言う人もいれば、かえって体重が増えてしまうと言う人もいます。カロリー収支だけを考えれば、体重が落ちるのが自然に思えますが、体重が増えると言われるのはなぜでしょうか?

これには相関関係と因果関係を区別すると答えが見えてきます。

砂糖や他の甘味料が体重に与える影響を調べる研究には、大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは相関関係を探す研究で、もうひとつは因果関係を調べる研究です。

まず、相関関係を探す研究は、被験者にアンケートを行ったり、食事記録をつけてもらったりします。そして、そこで得られたデータを分析して、体重と砂糖や甘味料の摂取量に関連性があるかと調べます。

その結果として砂糖を多く摂っている人は体重が思い場合が多いという関連が見つかる場合があり、これを相関関係と言います。ただ、ここで重要なのは相関関係が見つかっても因果関係があるとは限らないということに注意が必要です。つまり、こういうタイプの分析では「砂糖が原因で体重が重くなっている」とまで確証を得られないということです。

相関関係と因果関係の違いは重要なので、他の例を使って説明してみます。

例えば、夏の暑い日にはアイスクリームの売り上げが高く、海で溺れる人が多いというデータがあるとします。データ上では、このふたつに関連が見られるのですが、アイスクリームが人を溺れされることはないですよね。

暑い日にはアイスクリームを買う人が多く、それとは別のこととして暑い日には海に遊びに行く人も多く、結果として溺れてしまう人の数も多くなるわけです。ここでのポイントは、アイスクリームが溺れる人を増やす原因ではないということです。

また、因果関係を逆に取り違えてしまうことにも注意が必要です。

例えば、身長2メール以上の人を対象にしたデータがあり、職業はバスケットボール選手の割合が多かったとしましょう。ここでも相関関係が見えるわけですが、プロバスケットボール選手になれば身長が伸びるわけではありません。身長が高いとバスケットボールに有利なのでプロ選手になれる確率が高まるということです。

こうやって書き出すと当たり前のことのように読めるかもしれませんが、こういう勘違いはよく起こるのです。

甘味料の相関関係

砂糖や他の甘味料に関する研究データでも相関関係が観察されます。その中でも特に多いのが、体重が重い人は低カロリー甘味料の摂取量が多いというものです。

この相関関係だけを見ると、低カロリー甘味料を摂ると体重が増えるようにも見えます。しかし、体重が重い人は減量目的で低カロリー甘味料を摂っている場合が多いという可能性もあります。

低カロリー甘味料を摂ると体重が増えるのか、この因果関係をハッキリさせるには、「比較試験」と呼ばれるまったく違うタイプの研究が必要になります。

具体的には、被験者を「低カロリー甘味料を摂る人」と「摂らない人」に分け、実際にその生活をしてもらい、体重変化を比べるということになります。そして、低カロリー甘味料を摂った人の方が体重が増えるなら、低カロリー甘味料は体重を増やす原因になると言えることになります。

逆に、低カロリー甘味料で体重が増えないという結果になることも考えられます。その場合は、体重の重い人が低カロリー甘味料を多く摂っているのは、減量目的の生活スタイルだと考えることができます。

この関係は実際の研究でも確認されています。

まず、相関関係を観察した研究を紹介します。この研究では「低カロリー甘味料は皮下脂肪、内臓脂肪、筋間脂肪の多い状態と関連がある」と報告されました。こういう言い回しを見ると甘味料を避けた方が良さそうだと感じる人が多いでしょう。

この研究では、対象者の食習慣と体組成がどう変化したかを観察しました。20年という長い期間をかけて、開始時、7年目、20年目に食生活に関するアンケートを行い、低カロリー甘味料の摂取状況についても聞き取りを行いました。

その結果として、「低カロリー甘味料を多く摂っている人は各部位の体脂肪が多い」と報告されたのです。これは甘味料と体脂肪の相関関係であることがポイントです。

しかし、他の見方を示した研究もあります。この研究では、2万人以上の成人を対象として、10年にわたって食生活のアンケートを5回行い、その中で低カロリー甘味料や、低カロリー甘味料を含むダイエット飲料の摂取状況が調査されました。

ここでも低カロリー甘味料と体組成の間に関連が見られたのですが、この研究では単なる相関関係ではないとされました。体重を減らそうとしている人が、意図的に低カロリー甘味料を摂っているのだと結論づけられたのです。

この研究のデータでは、体脂肪を落としたり増やさないように意識している人は、体重に関わらず低カロリー甘味料を摂っている傾向が確認されました。つまり、太っていなくても、体型管理をする意識のある人が低カロリー甘味料を摂っているわけです。

因果関係としては、低カロリー甘味料が体脂肪を増やすのではなく、体型管理の意識が低カロリー甘味料の摂取につながっているという逆方向の関係だということです。この論文では、低カロリー甘味料は体型管理の努力の一環であり、この研究データから必ずしも体重が増えるとも減るとも言えるわけではないと強調しています。

低カロリー甘味料は体重を増やすと報告した論文はありますが、こういう研究は因果関係を適切に扱えていないと批判されています。

低カロリー甘味料に関する抵抗感は、こういう関係の捉え方によって変わります。相関関係だけを見るのではなく、因果関係まで考えると冷静な判断をしやすくなります。

甘味料と体重の因果関係

低カロリー甘味料を摂ったら体重が減るのか因果関係を突き止めるには、先に話した「比較研究」が必要です。そういうタイプの研究を紹介します。

この研究では被験者を3グループに分けました。

  • 糖入りの飲み物を低カロリー甘味料を使ったダイエット飲料に置き換える
  • 水に置き換える
  • 飲み物を置き換えるのではなくダイエットに関するアドバイスを受ける

砂糖入りの飲み物を置き換えたグループはどちらも体重が減りました。低カロリー甘味料を使ったグループの方が少し体重の減り幅が大きくなりました。

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砂糖入りの飲み物を水に置き換えるのも有効です。他の研究でも、水はダイエット飲料に近い減量効果が確認されています。

これを見ると、体重を減らすにはカロリー摂取量を抑えられるかがカギで、低カロリー甘味料を使うかは好みの問題でしかないと言えそうです。水に置き換えるのが苦でなければ、低カロリー甘味料を使う必要はないでしょう。

過去の比較試験で得られたデータをまとめて分析した論文があります。ここでは砂糖入りの飲み物をカロリーのない飲み物に置き換えた研究6件のデータが分析対象とされました。

体重はBMIとして0.31落ち、水と低カロリー甘味料を使った飲み物の効果は大きく変わりませんでした。

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砂糖入りの飲み物のカロリーを減らせば減量効果を期待できると示すエビデンスがかなりしっかりしているように見えます。低カロリー甘味料である必要はなく、好みの問題で続けやすければ選択肢にはなると捉えるのがいいでしょう。

低カロリー甘味料を使うことにデメリットがないか心配のなる人もいるでしょう。低カロリー甘味料の懸念点として話題にあがるものを取り上げておきます。

腸内環境と代謝への影響

低カロリー甘味料の懸念点として最もよく注目されるのが、腸内環境への影響です。わたし達の腸内には無数の細菌・真菌・ウイルスが存在していて、食べ物の消化に関わっています。そして、その延長としてこういった微生物はわたし達の免疫や代謝にも影響を与えます。

ただ、腸内に存在する微生物に影響を与える要因は無数に存在します。低カロリー甘味料に限らずあらゆる食べ物が関わりますし、睡眠やストレスの影響もあります。どういう種類の食物繊維を摂るかによっても変化があり、風邪を引くだけでも影響があります。そして、そういった影響は一定期間でおさまる場合もあれば、何年も定着することもあります。

現時点ではさまざまな側面から研究が進められている途中段階で、低カロリー甘味料の影響に関する研究も明確な答えが出ていません。ただ、代謝面に関しては低カロリー甘味料が悪影響を及ぼす心配は少なく、ポジティブな側面も期待できるようです。

いずれにしても、低カロリー甘味料の影響を判断するには時期尚早と言えます。すべての低カロリー甘味料が同じ効果を持つわけではないので、個別の甘味料ごとに研究が必要で、さらに個人の反応を見ていくことが必要になるでしょう。

ゼロカロリーでないものがある

砂糖の置き換えという意味では、砂糖よりも低カロリーであるものばかりです。ただ、すべての低カロリー甘味料にまったくカロリーがないわけではありません。

本来カロリーのない人工甘味料であっても、増量剤と呼ばれるものが混ぜられている場合があり、その増量剤にカロリーが含まれます。基本的に低カロリーなので神経質になる必要はありませんが、チリも積もれば山となるわけで、大量に使う人は認識しておくと良いでしょう。

顆粒タイプのスプレンダと呼ばれる甘味料は、スクラロース系の甘味料で、比較的味が良いと人気があります。これには増量剤としてマルトデキストリンが加えられています。白い粉末の糖質で焼き菓子に使ったときの食感を改善する効果があります。

同じスプレンダでもスティックタイプにはデクストロースが含まれます。これはブドウ糖のことです。つまり、おいしいと言われる甘味料の人気の秘密は糖質なのです。

カロリー含有量については、重さの違いを見ると分かりやすいかもしれません。砂糖は1カップあたり約200gで800kcalになるのに対して、スプレンダは1カップで約25g、75〜100kcalにしかなりません。1gあたりのカロリー含有量は大きく変わりませんが、体積に対する重さとカロリーはまったく違うわけです。

アスパルテームは1gあたり4kcalになります。しかし、甘さが強烈に強いので非常に小さな量でしか使われず、スプレンダと比べてもさらに目立った量のカロリーを摂るのは難しくなります。コカコーラゼロ350mL 缶1本に含まれるカロリーは、わずか0.3kcalほどにしかなりません。

一方、キシリトールは1gあたり約2.5kcalを含んでおり、「少し軽い砂糖」のように捉えておくと良いでしょう。

どの甘味料も砂糖より低カロリーであることは変わらず、大多数の人にとって問題になることはありませんが、甘味料の種類によって味やカロリー含有量に微妙な違いがあるのだと知識を持っておくのは良いでしょう。

クセになる?

もうひとつよくある話題として、甘さがクセになってカロリー摂取量を抑えられなくなるという懸念があります。

食べ物の味が食習慣にどういう影響を与えるかという意味で、おもしろい視点ではあります。習慣によって甘い物をよく食べるということ以上に、生まれ持った味の好みという可能性もあるでしょう。

いずれにしても、低カロリー甘味料がクセになって悪影響が出るという考えを裏付けるエビデンスは特にありません。甘みに関する研究では、人工であれ自然であれ、甘い食べ物を摂ると一貫して甘い物への欲求が高まるわけではないと示唆されています。

さらに、甘い食べ物や飲み物を摂ると、短期的に甘い物が欲しくなくなると示唆する研究もあり、これは減量を目的とする場合にメリットとなります。

こういった科学的知見を踏まえると、低カロリー甘味料がクセになって甘い物がやめられなくなるという考えに強い根拠があるとは言えないでしょう。

まとめ

低カロリー甘味料に関わる研究を数多く紹介してきました。全体として、低カロリー甘味料は体重を落としたり、維持したりするのに有効なツールだと言えるでしょう。実際、カロリー摂取量を抑えるのに取り入れている人は少なくありません。

低カロリー甘味料を使っているのは太っている人が多いという関連はありますが、それは相関関係に過ぎず、低カロリー甘味料が太る原因になるわけではありません。体重を落とすのに役立つ可能性は十分にあります。

いくらでも無制限に使うのをオススメはしませんが、減量や体重維持のための食生活を続けやすくするために多少取り入れるのは問題ありません。それ以上の効果があるわけでもありませんが、自分に合うと感じられれば十分なメリットを得られるでしょう。

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