減量と基礎代謝
減量すると基礎代謝が落ちます。これは毎日のカロリー消費量が小さくなるということです。体重を落とすにはカロリー収支をマイナスにすることが必要なので、基礎代謝が落ちると減量を進めづらくなってしまう可能性があります。
減量によって基礎代謝が落ちてヤセにくくなったり、太りやすくなったりすることをまとめて「飢餓モード」と呼ばれることもあります。
今回は減量が基礎代謝に与える影響を紹介します。実際に心配した方がいいのか、対策はあるのか?
体重が減る影響
わたし達の身体にはさまざまな組織があり、その種類によって消費するエネルギー量に違いがあります。
1kgあたりの消費エネルギーで見ると、筋肉は13kcal、体脂肪は4.5kcal、腎臓は200kcalと身体の部位によって大きな違いがあります。減量が基礎代謝に与える影響という意味では、まず体重の減り幅が大きいほど基礎代謝の落ち幅も大きくなると言えます。
さらに重要なこととして、どの組織が減るのかによって基礎代謝への影響は大きく変わります。体脂肪をたくさん落としても、1kgあたりの消費エネルギーが小さいので、基礎代謝への影響もそれほど大きくなりません。それに対して、消費エネルギーの大きい臓器が小さくなると基礎代謝への影響が大きくなります。
例として、筋肉と体脂肪と肝臓から合計で5kg重さが減った場合の基礎代謝の影響は以下のように見積もることができます。
| 組織 | 減量幅 | 代謝率 | 基礎代謝への影響 |
| 筋肉 | 3kg | 13kcal/kg | 39kcal |
| 体脂肪 | 1.9kg | 4.5kcal/kg | 8.55kcal |
| 肝臓 | 0.1kg | 200kcal/kg | 20kcal |
| 計 | 5kg | 67.55kcal |
それに対して、体脂肪だけで体重を5kg落とした場合には以下のようになります。
| 組織 | 減量幅 | 代謝率 | 基礎代謝への影響 |
| 体脂肪 | 5kg | 4.5kcal/kg | 22.5kcal |
基礎代謝が落ちるのを防ぐには、体脂肪以外の組織がへらないように減量することが重要になります。そのためには減量ペースを急がず、ゆっくり体重を落とすのが有効です。全体の減量幅が同じであっても、短期間で終えるために速いペースで落とすと、体脂肪以外の組織が失われるリスクが高まります。
筋力トレーニングを行うと、筋肉を維持して体脂肪を優先的に落としやすくなります。他には、たんぱく質をやや多めに摂るようにすると筋肉を維持するのに役立ちます。
ゆっくりした減量ペース、筋トレ、たんぱく質摂取という3つのポイントを押さえると理想的で、条件が合えば体脂肪を落としながら筋肉を付けることも可能な場合があり、基礎代謝が落ちるのを最大限に和らげることができます。
減量幅を超える代謝適応
減量して身体が小さくなると基礎代謝が下がります。そして、上に紹介したように組織の種類によって基礎代謝への影響は計算することができます。しかし、実際には減量幅から想定できる消費エネルギー分を超えて、基礎代謝が落ち込むという現象が起きます。
これは「代謝適応」と呼ばれます。わたし達の身体はカロリー不足の状態になると、エネルギーを節約するために身体が変化するのだと考えることができます。では、代謝適応がどの程度のカロリーに相当するのでしょうか。
2022年の研究では、12ヶ月かけた減量での影響が調査されました。減量幅は8kg、そのうち体脂肪が7.2kg、除脂肪体重が0.8kg、基礎代謝は約100kcal落ちました。

除脂肪体重が0.8kg落ちたのは筋肉や内臓です。これの影響は17kcal程度と見積もることができます。この値は厳密ではないものの、比較的正確な計算式による推定値です。減量による影響がこれだけであれば、残りは代謝適応で83kcalと考えることができます。
体脂肪の消費カロリーは1kgあたり4.5kcalなので、7.2kgの減量で32.4kcalと想定することができます。上の除脂肪体重の影響と合わせて考えると約50kcalが減量で説明できます。残り50kcalが代謝適応ということです。
さらに、この研究ではMRIを使って、臓器の大きさの変化が測定されていました。減量によって臓器の重さが100gほど減っており、それを考慮すると約60kcalが減量で説明できることになります。残り40kcalが代謝適応ということになります。
このように代謝適応の影響は、分析の方法によって83kcal〜40kcalまで数値に幅が出ました。この条件では40kcalが最も正確だと考えられます。しかし、実生活ではMRIを使って身体の変化を測定できる人はほとんどいないので、正確に分析するのは難しいと言えます。しかし、そもそも減量と代謝適応の影響を厳密に切り分けて把握しようとする必要はありません。どういう場合も減量幅で説明できる範囲を超えて基礎代謝が落ちることは変わりません。
代謝適応の影響の大きさ
ご自身が減量をするときに、どれだけ代謝適応が起きているか厳密に把握しようとする必要はありませんが、一般的にどの程度の影響があるのか知っておくと良いかもしれません。
減量幅や体質による個人差がありますが、全体として代謝適応の影響は5〜10%になることが多いようです。例えば、減量前の基礎代謝が2200kcalだったとして、減量によって組織が減ったことで基礎代謝が2000kcalに落ちると想定できる場合、実際の基礎代謝は1800〜1900kcalまで落ちる場合が多いということです。この100〜200kcalほど余分に落ちているのが代謝適応の影響です。
もっと大きな影響が出る場合もあります。一般的に減量幅が大きくなったり、減量ペースが速かったりした場合に代謝適応は大きくなり、基礎代謝が落ち込みやすくなります。
例えば、極端な条件で行われた研究では、成人男性が1日1200kcalの食事を摂りながら肉体労働を行った場合の影響が6ヶ月かけて観察されました。この研究では代謝適応の影響は20%以上になっています。
他には、一人のボディビル選手を観察した事例があります。この選手はコンテスト前の減量で基礎代謝が2500kcalから1400kcalまで落ち込んだと報告されています。この減量で除脂肪体重の減少幅は約3kgにとどめられています。この数字から計算すると、代謝適応は約40%にも達したと見積もることができます。この事例報告は、筋肉さえ維持すれば基礎代謝が維持されるわけではないと読み取ることもできそうです。
40%とは極端な数字で、ボディビルダーであってもここまでの代謝適応はほとんど起こりません。一般人のダイエットでこれほど生理的に追い込まれた状態になることはほぼないと考えていいでしょう。

逆方向に極端な報告もあります。研究条件によっては、一定数の被験者において基礎代謝が上昇することがありました。この人たちは減量を行っていて、体重が減っていたにも関わらず基礎代謝は少し上がったのです。ちなみに、減量ペースは1ヶ月あたり1kg以下とゆるやかなもので、全体での減量幅も小さなものではありました。

全体的に研究結果を見渡すと、減量の内容によって代謝適応の程度に違いがあるようです。体重の落ち幅が10%以下で、減量ペースがそれほど速くない場合、代謝適応は5%程度にとどまることが多いようです。もっと速く、厳しい減量では代謝適応が10%程度まで高まることが多くなってきます。減量幅が大きく減量ペースが速いと、除脂肪体重の減り幅も大きくなり、その影響で基礎代謝が減る分も加わるので、全体での減り幅はさらに大きくなります。
全体の平均値としては5〜10%が一般的と言えそうな感じですが、すでに紹介したように条件によってこの範囲に当てはまらない場合が出てきます。ゆっくり減量を行いながら基礎代謝が上昇するという経験をした人が報告されていますし、ボディビルダーの厳しい減量では40%という数値も報告されているわけです。
なぜ基礎代謝が落ちるのか?
基礎代謝が落ちる理由は生存に必要だからと考えることができます。人間の身体は進化の歴史の中で、食料が十分に得られないときにはエネルギーを節約するように適応してきました。カロリー収支がマイナスの状態が長く続くと、生存や繁殖に支障がでます。そのままでは次の世代に遺伝子を残すことができなくなるので、エネルギーの消費量を抑えることで確実に生存し、繁殖の可能性を高めようとするということです。
では、基礎代謝が落ちるときにわたし達の体内で何が起きているのかと言うと、現在も研究が進められているところで、現在もすべてが解明されているわけではありません。ここまでに分かっていることを紹介します。
まず、レプチンというホルモンの影響が考えられます。レプチンはカロリー収支や体脂肪量に反応して変化します。体内のレプチンの量が少なくなると、カロリー消費量が減るなどの適応が起き、体重を減らすのが難しくなります。

カロリー収支がマイナスになったり、その状態が続いて体脂肪が減ったりすると、体内でレプチンの量が減ります。このとき、コルチゾルというホルモンの量が高まり、それがレプチンの活動を妨げる働きをします。レプチンの活動が弱まると、体内でさまざまな変化が起こります。空腹感を感じやすくなる、甲状腺ホルモンや性ホルモンの働きが弱まる、運動以外での身体活動(NEAT)が自然と減る、交感神経、褐色脂肪細胞の活動が抑制されるといったことが挙げられます。
これまでの研究では、T3と呼ばれる甲状腺ホルモンが身体の組織でのエネルギー消費に関わっていると報告されています。
さらに、ミトコンドリアにも適応が起きて基礎代謝に影響を与える可能性が考えられます。一般的に、わたし達の体内にあるミトコンドリアのエネルギー変換効率は40%程度です。つまり、食べ物から得られたエネルギーの内、約40%を体内で使えるATPという形に変換しており、残りは熱として発散されています。
しかし、この変換効率40%という数字は固定されたものではなく、ミトコンドリアは条件によって適応し、効率が高まったり低下したりします。この変化は主にラットなどの齧歯類を使った研究で観察されているものですが、ヒトを対象としたエビデンスもいくらか得られており、体重が減るとミトコンドリアの効率が高まる可能性が示されています。
ちなみに、他の要因に変化がない状態でミトコンドリアの効率が高まると身体パフォーマンスが向上するので基本的には良いことだと言えます。ただ、脂質や炭水化物から得たカロリーをあまり使わなくなるので、減量を目的とする場合には歓迎しにくいことでもあります。
さらに、内臓の重さが小さくなることを代謝適応の一部と捉えることもできます。内臓は筋肉や骨と比べてカロリー消費量が大きく、内臓が小さくなると基礎代謝を下げることになります。内臓が小さくなるのは、単に食べる量が減ってエネルギー消費が減った結果かもしれませんが、ここまでに紹介したホルモンの変化が影響している可能性も考えられます。
食事量が減ると、肝臓が行う代謝や、腎臓が行う濾過の仕事量が減ることになります。それに対して内臓が小さくなるのは自然な適応だと捉えることもできるかもしません。
基礎代謝を落とさないためには?
減量時に基礎代謝が落ちてしまうのを防ぐために最も重要なことは、ゆっくりしたペースで体重を落とすことです。
過去の研究をまとめた2020年の論文で、減量ペースが速い場合と遅い場合の影響が比較されています。全体での減量幅はどちらも約7.5kgですが、ペースが速い減量では除脂肪体重が1.6kg落ち、基礎代謝が137kcal落ちたのに対して、ペースが遅いと除脂肪体重の減り幅は0.6kgにとどまり、基礎代謝の落ち幅は87.5kcalで済みました。
ここで遅いペースの減量は速いペースと比べて、2〜3倍ほどの期間をかけて体重を落としています。時間をかけた代わりに除脂肪体重を保ちやすくなり、代謝適応は25%ほど緩和できたことになります。
基礎代謝が落ちると回復しないのか?
まず、減量中に基礎代謝が落ちてしまうのを完全に避けることはできません。わたし達の身体の自然な反応なので、神経質に怖がる必要もありません。減量をやめてカロリー摂取量を戻すと、基礎代謝も大部分が回復します。
これに関して参考になる研究がたくさんあるので、主な知見を紹介します。
1999年の論文でそれまでの研究がまとめられており、肥満体形から大きく減量した人と、肥満になったことがない人の基礎代謝が比較されました。ここでは肥満から減量した人の基礎代謝は低かったものの、その差は3〜5%にとどまりました。
他の研究では、体重を13kg以上落として、その体重を1年以上維持した人を対象に基礎代謝が調べられました。同じ体重で減量を行っていない人と比較したところ、基礎代謝に違いは見られませんでした。
2021年の論文では、最近の研究も含めて代謝適応に関する報告がまとめられました。この論文では、カロリー摂取量を戻し、体重が安定した期間をしばらく過ごすと、代謝適応はほとんどの場合で明確に小さくなり、場合によっては完全に回復するとされています。
現在得られるエビデンス全体を見渡すと、減量の内容によって5〜10%程度の代謝適応が起きるのが一般的ですが、カロリー収支が釣り合う状態まで食事量を戻してしばらく経つと、代謝適応のほとんどは元に戻ると考えて良さそうです。

アメリカのテレビ番組のデータ
減量後は基礎代謝が劇的に落ち込むと信じる人が多くいるのですが、それはアメリカのテレビ番組で得られたデータが影響していることが多いです。
以前、アメリカには “BIggest Loser” というテレビ番組がありました。アメリカでは太っていることを恥ずべきことだとする風潮があり、この番組は肥満体形の参加者に大幅な減量をさせ、競わせるという内容でした。参加者はできる限りの運動と食事制限を行い、30週間で最大100kg以上の減量を強行していました。
2016年にこの番組の参加者を対象に研究が行われました。番組の中で減量を行う期間、代謝や体組成の変化を観察し、さらに減量の6年後に経過確認を行うという内容です。
このときの番組の参加者は、減量前の体重が平均150kgほどで、減量後には平均90kgまで落ちました。そして、6年後の平均体重は約130kgになりました。除脂肪体重は減量前に75.5kgから始まり、減量後は64.4kg、6年後は70.2kgとなりました。そして、基礎代謝は減量前で2600kcal、減量後には2000kcal、6年後は1900kcalと報告されました。
番組で30週間の減量を行った参加者が16人いて、その内14人の平均データを以下の表にまとめました。
| 減量前 | 減量後 | 6年後 | |
| 年齢(歳) | 34.9 ±10.3 | 35.4 ±10.3 | 41.3 ±10.3 |
| 体重(kg) | 148.9 ±40.5 | 90.6 ±24.5 | 131,.6 ±45.3 |
| 体脂肪(%) | 49.3 ±5.2 | 28.1 ±8.9 | 44.7 ±10 |
| 除脂肪体重(kg) | 75.5 ±21.1 | 64.4 ±15.5 | 70.2 ±18.3 |
| 基礎代謝実測値(kcal) | 2607 ±649 | 1996 ±435 | 1903 ±466 |
| 基礎代謝推定値(kcal) | 2577 ±574 | 2272 ±435 | 2403 ±507 |
| 代謝適応(kcal) | 29 ±206 | -275 ±207 | -499 ±207 |
基礎代謝推定値は、論文に報告された16人の性別、減量前の体組成、年齢を用いて線形回帰という分析手法で得られた値です。減量後には代謝適応で基礎代謝が275kcal落ちたと報告されました。さらに、6年後の経過観察では、代謝適応は回復するどころか、500kcal程度まで拡大したとされています。
この研究については、いろんな角度から語れることがあるのですが、以下の2点だけ押さえておけば大丈夫です。
- このトピックを扱う科学的知見全体を見渡したとき、この研究で報告された内容は明確に異色の存在だと言えます。代謝適応があまりにも大きく起きたことと、時間経過と共に回復するのではなく増大したことがポイントです。
- この研究では非常に極端な減量が行われました。体重の落ち幅が最も大きかった参加者は1週間に4kg近いペースで減量しており、参加者平均でも1週間に約2kgのペースです。この減量ペースを達成するため、厳しい食事制限をしながらキツい運動を1日3時間以上行いました。大多数の人にとってこういう減量はマネをすべきではなく、もっと一般的な条件で行われた研究を参考にするべきです。
それを踏まえて、この研究を深く理解するには注意すべきことが2点あります。
まず、この番組の参加者は減量前の時点での基礎代謝が非常に高くなっていました。下のグラフでは、今回の番組の参加者とスポーツ選手を比較しています。

今回の参加者は本格的にスポーツを行っている選手の平均と比べても、基礎代謝がかなり高い値を示しました。番組に参加する前は身体活動量の非常に少ない生活だったことを考えると、異常とも言える高さです。参加者の体組成を元に理論上の基礎代謝を計算すると、約2000kcalという値になります。しかし、実際に測定された値は約2600kcalで、大きな差がありました。
減量前の基礎代謝が非常に高かったので、代謝適応で基礎代謝が落ちて、回復しなかったとしても、減量後も基礎代謝は高い水準にあり、6年後も平均的な水準を保っています。
この研究は異色の存在だと表現しましたが、それは減量前の基礎代謝が異常なほど高い値を示したことが要因のひとつとして考えることができます。例えば、短期間食事量を増やすと基礎代謝が10%ほど高まることがあります。今回の参加者はテレビで大きな成果を見せるため、減量前に体重を増やしておこうとしたのかもしれません。序盤で良い成果を出せなくて途中で脱落してしまう展開を避けたかったと考えることもできます。
理由はどうあれ、もし減量前の基礎代謝が本来よりも高かったとしたら、その後の計測時には本来の水準に落ち着き、その影響で減量による代謝適応が大きく出たように見えただけという可能性があります。

さらに重要なこととして、この研究では基礎代謝の測定に使われた機器が途中で変わっていました。減量前と減量後の測定ではMAX-Ⅱという機器が使われていたのに対し、6年後の経過観察ではParvoMedicsという機器に変わっていました。測定機器によって誤差が出る可能性があるので、これは無視できないポイントです。ParvoMedicsは、この分野では正確で信頼性が高いと知られた測定機器メーカーで、世界中の研究者が使用しています。それに対して、この分野に精通している人の間でも、MAX-Ⅱは知られたメーカーではありません。
2018年に測定機器の正確さを調べた研究が発表されました。この機器は呼吸を測定し、そのデータから基礎代謝を計算します。MAX-Ⅱは酸素摂取量を約7%、二酸化炭素排出量を約4.5%大きく見積もっているという結果になりました。対するParvoMedicsの誤差は最大でも1.2%にとどまりました。MAX-Ⅱのdーデータに基づいて計算される基礎代謝は6.5%ほど誤差が出るということになります。
今回の研究では減量前と減量後の基礎代謝測定にMAX-Ⅱが使われたので、本来よりも高い値が報告られていた可能性があります。その場合、実際に代謝適応で基礎代謝が落ちた幅は報告よりも小さかったと考えられます。先に減量前の基礎代謝は1日2600kcalだったと触れましたが、実際には2435kcalくらいだったと考えることができます。そして、減量後については1日2000kcalではなく、1865kcalくらいだったということになります。
このことを踏まえると、減量の6年後まで基礎代謝が下がり続けたという話も変わってきます。6年後の経過チェックではParvoMedicsを使った測定で1903kcalという値が出ています。つまり、1865kcalから1900kcalへと少し基礎代謝は上がったと考えることができるのです。減量後から6年後の期間に参加者の体重が増えていることを考えると十分にあり得ることです。
これで想定できる基礎代謝の落ち幅は約500kcalから約330kcalまで小さくなります。
| 減量前 | 減量後 | 6年後 | |
| 実測値(kcal) | 2577 | 1996 | 1903 |
| 測定誤差修正値(kcal) | 2409.5 | 1866.3 | 1903 |
| 報告上の代謝適応(kcal/日) | -275 | -499 | |
| 修正後の代謝適応(kcal/日) | -257.1 | -331.5 |
ここまでに紹介した点を踏まえて言えることがいくつかあります。まず、MAX-Ⅱの測定に誤差があったとしても減量前の参加者の基礎代謝はかなり高い値だと言えます。そして、減量後には基礎代謝が下がりました。その後の6年で体重のリバウンドがあって、基礎代謝も高まりましたが、十分に回復したとまでは言えないかもしれません。減量後と6年後には、代謝適応で基礎代謝は約300kcal落ちていました。
減量後と6年後の基礎代謝の値は、一般人と比較してまったく普通の水準だと言えます。参加者の体重ではなく、除脂肪体重を考慮すると平均よりも基礎代謝がやや高いと言うこともできます。

このように研究結果を詳しく見ていくと、このテレビ番組でキツい減量を行っても基礎代謝が大幅に落ち込んで回復できなくなったわけではないと分かります。しかし、代謝適応は確実に起きていて、基礎代謝がいくらか落ちたことも確認できます。そして、基礎代謝は6年後の時点で回復できておらず、代謝適応が亢進した可能性も否定はできません。
代謝適応は程度の問題ですが、この研究は測定が正確ではなく、基礎代謝の落ち幅を実際よりも大きく報告してしまっている可能性が高いと言えます。報告によると約500kcalとなりますが、実際には330kcal程度と考えられます。そして、代謝適応は起きたものの、参加者は普通から高めの基礎代謝を保っていたと言えます。
また、繰り返しになりますが、この研究で報告されたデータは他の研究と比べて異色の存在です。この研究で行われた減量は極端な内容だったので、一般的な減量を行ったときの基礎代謝の変化を考えるのに参考になるとは言えないでしょう。
まとめ
かなり長い記事になったので、要点をまとめます。
この番組は話題を集めましたが、この研究を見て代謝適応を恐ろしいものだと考える必要はありません。極端な減量が行われたので、一般的な減量には当てはまりません。さらに測定が正確ではなく、代謝適応の影響が誇張されている可能性が高いです。
減量を行うと基礎代謝は落ちる可能性が高いと言えます。しかし、そのほとんどはシンプルに体重が軽くなる影響です。
減量時に除脂肪体重を維持できれば、基礎代謝の落ち込みを和らげることができます。これには、減量ペースをゆっくりにする、筋トレをはじめとした運動をする、たんぱく質をしっかり摂るといったことが有効です。
体重や身体組織が減ったことで説明できる以上に基礎代謝が落ちることを代謝適応と呼びます。これは減量時に起きる自然な反応です。
代謝適応は5〜10%程度になるのが一般的です。減量幅やペースがキツい減量では代謝適応も強く出ることが多くなります。
減量ペースを磯がないようにすると代謝適応を和らげることができます。カロリー収支のマイナス幅を小さくしたり、減量期間に休みを入れるようにすると効果が期待できます。
カロリー制限をやめて体重が安定すると、代謝適応は大部分が回復します。多くの研究で完全に回復したと報告されていますが、影響が小さく残ったケースもあります。影響が残る場合は3〜5%程度が多いようで、100kcal以下と想定することができます。
原文:Greg Nuckols
翻訳:八百 健吾